忘れたくない思い出がある、忘れられない思い出がある。

この間父親が
「自殺する人間は弱い人間だ」
と言うようなことを言っていた。
それは絶対にないと思う。確かに、自殺することは他の人から見たら人生から逃げているようにしか見えないかもしれない。でも、自殺した人は僕達ではわからないぐらい悩んだ結果自殺したんだと思う。だから僕は「自殺する人間は弱い人間」だなんて言わせたくない。絶対に。
　例えば雪山で遭難したとしよう。全てが凍り付いていく中あなたは生き抜く自信がありますか？　少なくとも僕にその自信は無い。苦痛の生と安楽の死。どちらかを選べと耳元で悪魔に囁かれたら……僕は死ぬことを選んでしまうだろう。
　自殺もそれと同じだと思う。イジメが原因だと大人はなおさら「死んだのは弱いからだ」と考えるに違いない。でも、自分以外が全員敵だったら？　信用できる人間が一人もいなかったら？　そのため、学校などに行くことが苦痛になったら？　家に帰っても自分を理解してくれる人間が一人もいなかったら？　おそらくそれは、地獄よりひどい場所だ。
　僕も何度か自殺を考えたことがある。結構本気で考えたこともあった。別にイジメがあったわけじゃないが、人生に疲れていたように思う。今日生きている意味、明日生きる勇気、自分の存在価値、周りとの人間関係。何もかもがわずらわしくなった時もあった。
　一人も自分を励ましてくれる人間がいなければ、その人にとってこの世界は苦痛以外の何でもない。

　自殺者を弱い人間だなんて、絶対に言わせない。